三道具鯛みつどうぐたい

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『鯛百珍料理秘密箱』レシピ一覧 


三道具鯛みつどうぐたいのレシピ


三道具鯛は、江戸時代の1785年に出版された『鯛百珍料理秘密箱』に掲載されている70番目のレシピである。『鯛百珍料理秘密箱』原文には以下のような説明がある。

【 鯛百珍料理秘密箱 】三道具鯛
鱗をふき腹をあけ、雑もつを出し、能々あらひて、切候時二は、下腹のひれより、上身の方で切也、但し丸めに切る也。扨、是より、両身のひれを取、扨、尾際より、背びれ際迄の間を切取、右の尾ひれと二色合なり。扨、首を前に直す也、是を塩蒸にして、身を小才二切、器に入レ出し申候、料理の時に、背の鋤鍬を出、あらひて、貯をけは、色々のまじない二なる故、のけをく也。


鯛百珍料理秘密箱

三道具鯛:新日本古典籍総合DB


【 三道具鯛 訳文 】
鱗を取り、腹を開けて臓物を出し、良く洗う。切るときには下腹のひれから、上身の方へ丸めに切る。さらにここから両側のヒレを切り取る。また尾際より背びれまでの間を切り取り、これで尾側の身とヒレ側の身でセットとする。鯛の頭を前に直す、塩蒸しにして、身を適当な大きさに切って器に入れて出す。
料理の時には鯛の背から鋤鍬(三つ道具)を出し、洗って取り分けておくと、いろいろなまじないになるので保管しておく。



レシピ解説

この料理は鯛の蒸し料理であるが、その料理名からすると、鯛の骨の方に重きが置かれているように思える。三つ道具とは鯛の頭の辺りにある骨のことである。この骨は3つの骨からなり、それぞれが鍬・鎌・熊手の形をしているので三つ道具と呼ばれている。鯛には九つ道具と呼ばれる部位があり、安政年間に記された『水族寫真』には以下のような図が掲載されている。

水族寫真

『水族寫真』:国立国会図書館


鯛の骨の中でも、鯛の胸びれの中にある鯛の形をした骨は「鯛の鯛」と呼ばれて珍重されている。「鯛の鯛」は大阪の花柳界の間で持つことが流行し、かつては芸者たちが縁起担ぎに財布や帯の間に忍ばせていたそうである。

三つ道具がどのようにまじないに使われたのかは分からないが、現在でも「九つ道具」として鯛の骨を集める人はいるようである。「腐っても鯛」という言葉があるが、これは高級なものが、多少悪くなっても、何らかの価値があることを意味する言葉である。言い換えると腐って食べられないようなものでも、鯛であれば有難がるほど貴重なものであることを意味している。鯛であれば骨もそうで、縁起物あるいはお守りとして大切にされているのである。


現代のレシピ

ウロコを取る。
内臓を取りだす。
血合いを取り、良く洗う
 ↓
下腹のひれから、上身の方へ丸めに切る。。
両側のヒレを切り取る。
塩蒸しにする。
 ↓
身を適当な大きさに切って器に入れて出す。
 ↓
三つ道具は保管しておく。